いきしちみ

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1-2.高嶺の華より日陰の花

 かちゃかちゃ……こぽこぽ……

 キッチンでお茶を入れている女性の後ろ姿を俺はぼーっと見ている。先程、玄関の前でぶつかった女性は隣に住んでいる弘前ひろさきみことという人妻だった。弘前さん、旦那さん、小学生の息子さんの3人家族で暮らしていて、この時間帯は弘前さん一人しかいないらしい。
 そんな彼女が住む家に何故か俺は上がりこんでしまっていた。どうしてこんなことになっているのかというと――

「ごめんなさいね、電球の交換手伝ってもらっちゃって。さっき急に切れちゃったから旦那に変えてもらうこともできなくて」

「あぁいえ、ここのマンション天井がちょっと高いですよね。無理すると危ないのでよかったです」

 ということだ。

(人妻系エロゲーの導入みたいな展開……まさか実在するとは……)

 心の内で密かに感動していると弘前さんはトレーにカップを二つ乗せてこちらにやってきた。

「はい、どうぞ」

 湯気が立っている熱々のお茶が目の前に置かれる。

「ありがとうございます、いただきます」

 ふー、ふー、と息で冷ましながらゆっくり飲む。すると味に関する語彙が少ない俺では表現しようがない風味が舌の上に広がった。

「あ、美味しいですね。お茶のことはよくわからないですけどいい味だと思います」

「ほんと?よかった~。お客さんにお茶を出すことなんて随分と久しぶりだから自信なかったのよね」

 そう言いながら彼女は俺の向かいに座って自分もお茶を飲み始めた。
 会話が途切れリビングがしんと静まり返る。よく知らない女性と二人きりというのは少し居心地が悪い。
 普段の俺なら他所の家に、しかも人妻が一人でいるときに上がり込むなんて危ないことはしない。というか陰キャゲーマーにそんな度胸はない。

(だけどいまは……)

 テーブルの下にあるスマホをちらっと確認する。画面には相変わらず弘前さんの顔写真と【催眠状態中!】の文字列が表示されていた。
 そう彼女は今催眠が掛かっているはずなのだ。だからヤるなら今がチャンス。表示されている文字の下には【02:27:45】という数字があり、徐々に数が減っていっている。
 画面から察するにこれは催眠状態が適用される残り時間なのだろう。つまり弘前さんに手を出すなら早くしないと効果が切れてしまう。
 だから今すぐ押し倒すのが得策。それはわかっているのだが……

(美人局じゃないだろうな……?)

 童貞特有の慎重さが一歩踏み出そうとする足を留めている。冷静に考えればおかしいところはいくつもあるのだ。
 例えばスマホに表示されている顔写真、これはいつ撮られたものだ?ランダムな女性が選ばれた後に運営がこっそりと撮ったということなら納得できる。
 だけど弘前さんの写真が映ったのは購入ボタンを押してすぐ、しかも立ち位置的に俺が邪魔になって取れないはずのアングルだ。事前に撮られた写真という方が自然に思える。

 ということはやはり仕掛けられた罠……!俺を詐欺にハメるために巧妙に用意されたトラップだ!いざ俺が彼女に手を出そうとしたら部屋のどこかから怖い顔のお兄さん達が登場して恐ろしい書類に判子を押させられるのだ。
 如何にも怪しい状況、適当な言い訳で逃げるのが最善手。そう思いつつも俺は椅子から立つことが出来ない。なぜなら――

(もし本当にヤレるチャンスなら絶対に逃したくない……!)

 セックス出来るかもしれないという淡い期待が俺をこの場に留まらせていたからだ。
 弘前さんの顔を見る。テレビに出ている女優とは比べ物にならないが、それでも十分美人と言える容姿だ。クラスだとあまり目立たないがよく見ると整った顔立ちのが分かるレベルというのが一番適切な表現かもしれない。
 そして何より目を引くのはその胸だ。歩くだけでぷるんぷるんと揺れる大きな胸、何カップあるのかわからないほど大きいその胸は男の視線を否応なく引き寄せてしまう。

 同級生に弘前さんがいて付き合うことになったら、クラスの男子にしばらくどやされることは間違いないぐらいの良い女だ。だからもし可能性があるなら是非ともセックスしたい。こちとら未だ年齢=彼女いない歴の童貞なのだ。例え一回り年齢が違っていたとしても綺麗なお姉さんが相手ならチンポを突っ込んでみたいのだ。

 俺の脳内では「早くここから立ち去れ!」という理性と「とりあえずアタックしろ!」という本能がせめぎ合っていた。

(くそっ……どうすればいい。いきなり「セックスさせろ」なんて言ってアプリの効果が嘘っぱちだったら俺は即牢屋行きだ。だからまずは弘前さんが催眠に掛かっているか確認しないといけない。その為には何か言わないと……でもなんて言えば……!)

 ぐるぐると思考が回り続ける。その間刻々とその数を減らすカウントダウン。
 ただただ焦る俺は彼女に何も言うことができない。もし催眠が使えるようになったらどんな命令をするか、妄想の中で散々考えたはずなのにいざその機会が訪れると頭の中が真っ白になって何も思いつかない。

(どうすれば……何を言えば……)

「あら、もうこんな時間。そろそろ家事の続きをしないと」

 弘前さんがそう呟く。はっとして時計を見ると時刻は15時を回ろうとしていた。

「宿見君、今日は手伝ってくれてありがとう。また何かあったら……」

 彼女は俺を帰すための言葉を告げようとする。催眠状態が切れる前に弘前さんによってタイムリミットが迎えられようとしていた。

(な、なにも言わずに終わるのか……?可能性は目の前にあるのに……)

 絶望に目の前が暗くなっていく。この瞬間を夢見てきたのに。挑むこともできずに俺は失うのか……

(そんなの……そんなの嫌だっ!!)

「あのっ!もうちょっとだけお話できませんか!?」

「え?」

 咄嗟に口から出たのはナンパの常套句のようなつまらない言葉だった。

「ちょっとだけでいいんです。折角知り合えたのでもう少し弘前さんのことを知りたいなって……」

 そう言葉を続けながらも俺の語勢はどんどんと弱くなっていく。駄目だ、今更こんな風に言っても彼女は訝しむだけだろう。

(失敗したな……)

 もっと上手くやれば可能性はあったかもしれないのに。準備が足りなかったせいで俺はチャンスを失ったのだ。
 はぁと小さく息つく。落ち込んだ様子の俺を見た弘前さんは首を傾げて少し悩んでいたが、しばらくするとくすくす笑い始めた。

「そうね、お隣さんだったのに全然話したことなかったものね。じゃあもうちょっとだけお話ししましょうか」

「は、はい!」

 取り合えず時間を稼げたことにほっと胸を撫でおろした。よかった、チャンスはまだあるぞ。

(それにしても急に上がり込んだ男に対してここまで仲良くしてくれるなんて、なんとなく暗い感じがするのに案外社交的な人なんだな)

 弘前さんへの認識を改めるつつも、俺の中にある黒い部分がとある疑念をささやいていた。(今のは俺の命令に従ったのではないか?)と。

 ◇

「へー、旦那さんとは学生時代からのお付き合いなんですね」

「そうなの!大学を出て数年してから結婚するつもりだったんだけど、4年生の時に私が妊娠しちゃって。だから卒業と同時に籍を入れたの」

 にこにこと笑いながら弘前さんは馴れ初めを語る。ここしばらく雑談相手がいなかったらしく久々のお喋りがとても楽しそうだ。

 彼女の話に相槌を打ちながら俺はあらためて催眠状態について思い返す。
 弘前さんにかけられた催眠の効果は【プレイヤーの言うことに流されやすくなる状態】というもの。つまりは普通なら断るようなお願いも特に違和感を覚えることなく受け入れてくれるのだ。
 もし俺が「お客さんを招いたときは履いているパンツを渡すのがマナーですよね?」と言えば弘前さんは慌てて脱いだばかりのほかほかパンツを渡してくれるだろう。

 エロゲによく出てくる指を鳴らすだけで思いのままにできる催眠より出来ることは幾らか少ないが、それでも十分に強力な催眠だ。これなら彼女の身体を思うがままにしゃぶりつくすことが出来るだろう。後は弘前さんが催眠に掛かっていることを確認さえできれば――

「……そう、だからやっぱり専業主婦なんてなるもんじゃないわね。毎日暇で暇でしょうがないんだもの」

 言いながら弘前さんはいじけたような顔をする。ここだな、と思い俺は一歩踏み込んだ質問を彼女に投げかける。

「そうなんですね~。そんなに暇なら愛人を作ろうって考えないんですか?」

 そんな問いを投げかけると彼女はぎょっと目を見開いて驚いた。

「あ、愛人って……そんなの作るわけないでしょう」

「なんでですか?知り合いの専業主婦の人に聞いたら最近はどこの奥さんもセックスフレンドの一人や二人はいるって言ってたんですが」

 すっとぼけた口調で返す。もちろん専業主婦の知り合いもいなければそんな話を聞いたこともない。普通に考えればありえない話だ。弘前さんも何をバカなと流すだろう。
 だけどもし彼女が催眠に掛かっていたら……

「そ、そうなの?最近じゃそういうのは珍しくないの……?」

 どんな与太話でも俺がすれば容易く信じてしまう。そしてその効果はたったいま確認できた。
 ニヤリと釣りあがりそうな口角を必死に押さえつけながらなんてことはない顔で続ける。

「えぇ。なんでも家族のいないお昼の時間に思いっきりリフレッシュすることで家事が捗って家族とより仲良く過ごせるのだとか。QoLの向上やメンタルの安定にもいいらしいんですよね」

 即興で考えた嘘八百も今の彼女には信憑性のある話に聞こえたのだろう。頬を赤くしながらも「へー」と興味がありそうな反応をしている。

「弘前さん、こんな風に出会ったのも何かの縁です。俺をセフレにしてみませんか?」

「えっ……えぇっ!?宿見君を!?駄目よそんなの」

 ぶんぶんと手を振って否定する弘前さん。

「どうしてですか?俺のこと嫌いですか……?」

「そうじゃないけど……ほら、私あなたより10歳も年上だし……」

 そう言って弘前さんはじっと自分の手を見た。家事で荒れた手。女ではなく妻や母として過ごしてきた日常によってゆっくりと価値を失った身体。今更私なんかが男性に求められることはない、なんて思っていそうな彼女の手を両手でぎゅっと握る。

「弘前さんはとても魅力的です。すっごく美人で女性的で……俺、弘前さんと二人きりだと思うだけでもう……」

 俺は椅子から立ち上がる。目の前に現れた突起物に弘前さんの目線が向けられた。

「あっ……」

 弘前さんが大きく目を見開く。視線の先にあったのは大きくテントを張った俺の股間だ。
 彼女をどうやって堕とすか、そんな妄想を繰り広げていたせいで俺のチンポはさっきからずっとバキバキに勃起しっぱなしだ。

「弘前さんは良き妻・良き母として十分頑張ってきました。だからちょっとぐらい自分の為に時間を使ってもいいんですよ」

 言いながら彼女の手を俺の股間に当てる。じっと俺の股間を凝視していた弘前さんだったが、しばらくするとゆっくり手を動かして俺のチンポをさわさわと撫でた。

「そう……よね。私だって頑張っているんだもの。ちょっとくらい楽しんだっていいわよね……♡」

 先程まで見せていた主婦としての顔ではなく、情欲に火照った雌の顔をあらわにした弘前さんは媚びるような笑顔で俺に笑いかけた。

 テーブル下のスマホにちらりと目をやる。
 残り時間、1時間40分。

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