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ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ―――
「あっ……あんっ……んっ……そこっ……♡」
真っ昼間のリビングに腰がぶつかりあう音と人妻が上げる嬌声が響く。クーラーが付いているのにもかかわらず二人の身体からは玉のような汗が流れ落ちていた。
テーブルに彼女の身体を押し付けて後ろから覆いかぶさりながら俺はひたすら腰を振る。ぎゅうぎゅうと締め付けるこの肉壺をほじくり返すことだけが性欲に燃える脳内を占拠していた。
「お゙っ゙そこっ♡奥気持ちいい♡もっと突いて♡♡」
とんっと亀頭が奥を突くと顎をそらせながら喘ぎ声が上がった。おねだりに応えるようにカリを膣口まで引き抜いてズドンと勢いよく突き戻す。押しつぶされた子宮口がひしゃげぷしゅっと潮が飛び散った。
長いストロークを繰り返す度に跳ねあがる彼女の身体にあわせてガタガタとテーブルが音を立てる。隣の部屋に聞こえていないだろうか、そんな不安がちらりと脳をかすめる。
「お゙ぉ゙~♡おちんちんきもちいいぃぃぃ♡♡こんなに気持ちいいのはじめてぇぇぇぇぇ♡♡♡」
そんな俺の不安も知らず目の前の女性は外に聞こえるほどの大声を上げながら背中を大きくのけ反らせている。彼女の頭はセックスに夢中でその他のことは考えられないようだった。しとどに濡れた蜜壺はもっとシてと言わんばかりにキツく肉棒を締め上げる。
「ぐっ気持ちよすぎ……もう出るっ!」
湧き上がる射精感が限界を超えた俺はチンポを今までで一番深く突き刺すと込み上げる熱量を彼女の中に解き放った。
どびゅるるるるるるるっっ!!!!
「んあああああああっ♡♡♡膣内で出てるぅぅぅぅぅ♡♡♡」
流れ込む精液が子宮の中を真っ白く染め上げていく。どくっ、どくっと竿が脈動するたびに白い背中が跳ね上がる。膣内に出された衝撃で一気に絶頂へ昇りつめた人妻は口を大きく開けながらびくびくと身体を痙攣させていた。
硬直するように絶頂の余韻を嚙みしめていた女体は急に弛緩し、べちゃりとテーブルに崩れ落ちた。衝撃で膣口からチンポがぶるんっと勢いよく飛び出す。ぽっかりと口を広げた蜜壺からは愛液と精液のミックスジュースがどろどろと滴り落ちている。
どうしてこんなことになったのか、荒く息を吐きながら俺はつい数時間前のことを思い出していた。
◇
「右、左、バックステップ。攻撃、バック、攻撃せずに左」
激しい戦闘を映し出すモニターを凝視しながら無心で指を動かす。口から漏れ出る言葉は意識してのものではない。ぐるぐると回る思考が口から勝手に溢れているだけだ。
「回避、回避、こうげっ……回避っ!危ねっ、焦るな焦るな」
じんわりと滲む汗が指を滑らせようとしてくる。攻撃の隙を見てズボンで拭いしっかりとコントローラーを握りなおす。
ラスボスの体力ゲージは残り1割を切っていた。このまま油断しなければあと数分もせずに削りきれるだろう。
焦るな、急ぐな、一瞬の油断が命取り。緩みそうになる気を引き締め終着への道筋を一歩、また一歩と進んでいく。
「終わりだっ……!」
大振りの攻撃モーションをかいくぐり一閃、必殺のゲージ技は永遠にも思えたラスボスのゲージを1ドットも残さずに削りきった。
「…………っっっしゃあぁ!!」
コントローラーを投げ捨てガッツポーズを取る。画面ではエンディングムービーが流れているがそれどころではない。シュッシュッと無意味にシャドーボクシングをして高揚する気分をなんとか収める。
「ようやくクリアしたぜこの野郎っ!」
戦闘開始から数時間が経過してついに俺は長かったゲームの終わりを迎えることができた。
「ふぅ~、きもちいぃぃぃぃぃ」
勢いよくベッドに寝転がる。極度の緊張から解放された脳みそは回転数を大きく落とし思考を緩慢にしていた。しばらく休まないと難しいことはなーんも考えられないな、これは。
「……ははっ、闘争本能が刺激されまくってたからかな。ギンギンになってら」
自らの股間に目をやるとそこには大きなテントが張られている。エロいものを見ていたわけでもないのにチンコが破裂しそうなほど勃起していた。これが疲れマラというやつか、あるいは戦闘に向かう雄は子孫を残すと言われるアレだろうか。
ヌくか、放置しておくか、ぼんやりとした頭で考える。ヌくなら何をオカズにすべきか、積んでいたエロゲーはとうの昔に全部消化したから……
「……まぁいいや、そのうち収まるだろ」
いいオカズが思い当たらなかった俺はガチガチのきかんぼうを放っておくことにした。すまんな息子よ、いまはそういう気分じゃないんだ。
「それよりも腹減ったな。なんか買いに行くか」
そう呟くのと同時に腹が間抜けなうなり声をあげた。どうやらこいつも俺の意見に賛成らしい。ベッドから起き上がりスマホと財布をズボンにつっこんで家を出る。
目指すのはマンションのすぐ近くにあるコンビニだ。適当な弁当でも買って部屋でゆっくり食べよう。
マンションのエントランスに到着するとそこでは今日も暇な主婦たちが井戸端会議を開催していた。
(毎日毎日飽きないことで。なにをそんなにお話するんでしょうねぇ)
目線を合わせないようにしながら横を通り過ぎる。近づいた途端に喋るのをやめた彼女たちは俺が遠ざかるとまたひそひそと内緒話をしだした。おい、そこの人妻。不審者を見るような目をこっちに向けるな……
女という生き物と俺は深く関わったことがない。一時的に仲良くなったとしても特になにをしたわけでもないのにいつの間にか疎遠になるばかりだ。
いつかはこんな俺にも彼女が出来るんじゃないかと生きてきてもうすぐ20年。いまのところ女っ気は少しも見えてこない。
「はぁ……何もかも嫌になるな……」
マンションから出るとカンカン照りの太陽から放たれた日光が不健康な肉体へ降り注いだ。寝不足の身体には厳しい明るさに思わずうっと呻く。
八月上旬、夏は真っ盛りだった。
「はぁ~、次は何のゲームをするかなぁ」
食べ終わった弁当をテーブルに置きっぱなしにして俺はスマホをいじる。買うだけ買って積みまくっていたゲームはここ二週間でほぼ消化してしまった。ろくにバイトもしていない大学生の夏休みなんてそんなもんだ。
メモに書き写しておいた積みゲーリストを眺める。残っているのはインディーズゲーが数本、ガチガチにプレイしたら一週間で終わりそうな残量だった。新しいゲームを補充したほうが良さそうだ、どんなジャンルを買おうか。
「うん、エロゲーだな。エロゲーを買おう」
当初は10本近く積んでいたエロゲーはわずか数日で全部消化しきってしまっていた。右手は忙しいからほぼ左手だけでプレイしていたのになぜあんなに早かったのだろう。不思議なこともあるものだ。
「いかんな、これはいかんぞぉ」
こんなことではさっきのように息子が戦闘準備を始めてもすぐにはヌくことができない。いくつかストックを用意しておき、いざムラッときたらその日の気分にあったシチュエーションを選択する。これこそが良質なオナニーライフを送るための秘訣なのだ。
「そうと決まれば早速また買い貯めねば。今日はどんなジャンルのやつを買おうか……催眠?悪堕ち?う~ん……ん?」
ウキウキでエロゲ探索を始めようとしたその時、スマホがぶるぶると身を震わせた。実家からの連絡だろうか、通知を見ると見知らぬアドレスからメールが来ていた。タイトルを見ると「VD運営:プレイヤー当選のお知らせ」と書いてある。
「なんだこれ?ネトゲのベータテストにでも応募してたか?」
申し込んだ覚えはないが忘れているだけかもしれない。一応開いて中を確認してみる。本文にはこんなことが書かれていた。
~ VDへようこそ ~
・VDは現実世界を舞台としたヒロイン攻略型拠点制圧ゲームです。あなた自身がプレイヤーとなって近くにいる綺麗でかわいい『ヒロイン』たちを攻略していきます。
・ヒロインは所属する拠点に紐づいており、彼女たちを攻略すると拠点の攻略が進んでいきます。
・規定数のヒロインを攻略すると拠点を制圧することができます。
・拠点を制圧したらもうその拠点はあなたの物!建物外見の変更、特殊設備の設置や所属するヒロインたちとえっちがやりたい放題!
・さぁ、この世界をあなたが楽しく生きられる形に変貌させましょう!
「うん、スパムだなこれ」
あまりにも突拍子のない内容に思わずそう断定する。ツッコミどころが多すぎるのだ。現実世界でやるゲームとか、女を攻略して拠点がゲットとか。
こんな設定に引っかかる奴なんているのか?もしいたらそいつはよほどのバカか性欲丸出しの猿に違いない。
「……まぁでも暇だからな。試しに入れてみるか」
『ヒロインたちとえっちがやり放題!』その文字を凝視しながらメールに貼られたリンクをタップする。み、見てみるだけだから。アプリの完成度を確認してみるだけだから……
「宿見 烙」19歳。ヤリたい盛りの童貞大学生。女とセックス出来る可能性が1%でもあるなら飛びつきたいお年頃だった。
リンク先からアプリをダウンロードし、しばらく待つとスマホの画面に「VD」と書かれた無機質なアイコンが追加された。
開いてみるとシンプルなアニメーションロゴが流れる。そのあとにアプリのホームと思わしき画面が表示された。
「見た目は普通のソシャゲみたいだな……」
画面の下にあるメニューバーには『拠点』『ヒロイン』『ステータス』といった項目が存在している。メールにも書かれていた名称が使われているな。どんな意味なのだろう。
確認するためにボタンを押そうとするとチュートリアルのポップアップが出てきて俺の操作を邪魔した。最近のソシャゲはチュートリアルが終わるまでリセマラできないタイプが多いよな。まぁ出されたら読むけどさ。
「何々……?各項目の説明からか」
勧められるままに読んでいく。チュートリアルメッセージにはこんなことが書いてあった。
『拠点』というのは街中にある建物を攻略することでゲットできるプレイヤーが自由にできる領域のこと。学校、コンビニ、図書館といった施設のほかにも他人の家や俺が住んでいるこのマンションも攻略すれば拠点にできるらしい。
攻略を進めて拠点を制圧することによってエロいことがやりたい放題とメールには書いてあったな。会社の社長になったら部下にセクハラし放題って感じか?
「制圧に必要なのは……ヒロインの攻略か」
『ヒロイン』とは拠点に所属する女のこと。つまり攻略とは彼女たちを自分のものにすることのようだ。おいおい、ギャルゲーのノリで言われても彼女いない歴=年齢の童貞には厳しいぞ。そもそも何をしたら俺の女になったって判定されるんだ?
ヒロインの説明を読み進めていくと攻略の進め方について書かれてあった。ヒロインの攻略は『陥落』と名づけられた段階で分けられており、第一、第二、第三陥落の三段階があるようだ。
第二、第三の達成条件はまだ見られなかったが第一陥落の部分には【ヒロインとセックスをすることで達成できます】と記載されていた。
「か、簡単に言ってくれるねぇ……」
急な煽りを受けてこめかみがピキピキと音を鳴らす。初っぱなからハードルが高いじゃないか。第一段階なんて攻略の一歩目だろうになんでもう肉体関係を結ぶんだよ。そんな簡単にセックスできたらこんなゲームに飛びついてねぇよ!
苛立ちのあまり残りのチュートリアルをぱっぱと飛ばしていく。細かい説明は後から理解すればいいだろ、俺がしたいのはセックスだ!このゲームがただの釣りなのか、それとも本当に女とヤリたい放題できるのか、早く確かめさせろ!!
画面を連打しているとチュートリアルが終わったらしい。最後に表示されたポップアップには【チュートリアル完了ボーナス!ヒロイン一人を催眠状態にするチケットをゲットしました!】と書かれていた。
「催眠……状態!」
急に訪れたエロゲー的展開に半ば諦めモードだった俺のテンションがぐぐっと浮上した。催眠!なるほど、それならいきなりセックスも夢じゃないな。
この催眠チケットは使用時に付近にいるランダムな女性一名に対して【プレイヤーの言うことに流されやすくなる状態】を付与するとのこと。つまり「セックスさせてください!」と頼み込めば簡単にヤらせてくれる状態になるのか。なんてすばらしい効果なんだ。
近距離にいる女にしか使えないというのは難点だが、逆に近づいてしまえば無条件に対象にできるというのは強みでもある。
(……っ!そうだっ!)
その時、素晴らしいアイデアが俺の脳に舞い降りた。このチケット、テレビ局で使えばかなり期待値が高いんじゃないか?
催眠をかわいい女に使うためには近くにいる女がみんなかわいければいい。つまり美人率が高いところで使えば失敗する可能性が下がるというわけだ!
よし、じゃあ早速テレビ局に向かおう。いや、むしろアイドル事務所の方がいいだろうか?膨らむ妄想に胸を躍らせながら玄関に向かう。
靴を履き勢いよくドアを開けるとゴンッと何かにぶつかった音がした。
(やっべ!)
慌てて外に出ると女性が倒れこんでいた。顔立ちは綺麗だがどこか影のある美人、見た目からすると20代後半ぐらいだろうか?
「すみません!お怪我はありませんか?」
彼女が腕に下げていた買い物袋からはいくつか野菜がこぼれていた。慌てて拾いながら様子を目をやるとあざや血は見えなかった。よかった、怪我はないみたいだ。
「大丈夫です、そこまで強くぶつかったわけではないのですがちょっとびっくりしちゃって……」
そう言いながら彼女は柔らかく微笑んだ。
「本当にすみません。立てますか?」
優しい人で助かったと安堵しながら先に立ち上がって彼女に手を差し出す。女性が俺の手を取って立ち上がろうとしたその時――
ぽろっ
(おっと……)
ポケットからスマホが転げ落ちた。咄嗟に差し出しているのとは逆の手で地面に落ちる前にキャッチする。
(危ない危ない……せっかくこれから試そうとしていたのに壊したら駄目になる所だった……)
立ち上がった女性に再度謝りながら壊れていないかスマホを確認する。端末自体に破損はなかったのだが、画面の中に先程までと違うところが一つあった。
VDには【催眠チケット発動!この写真の女性が対象になりました!】という文章が表示されていたのだ。
(ちょっ……えっ……なんで……?)
混乱する頭で状況を整理する。どうやら落ちたスマホを手で掴んだ瞬間にチケット使用を誤って押してしまったらしい。なんてドジだ!こんな普通の住宅地じゃ美人の割合なんてたかが知れているというのに!
(頼む、せめて普通レベルの容姿を持った女が来てくれ!)
そう祈りながらスマホに写された写真を覗き込む。するとそこにはとても見覚えのある女性の顔が表示されていた。
見覚えがあるのも当然だ、まさにいま彼女の前に立っているんだから。顔写真の下には簡素なプロフィールが記載されていた。
【弘前命 専業主婦 人妻】
(一人目から人妻かよ……)
想像の遥か斜め上を迎えた展開に思わずため息が漏れた。
「はぁ……」
「?」
がっくしと肩を落とした俺をスマホに映っている写真と同じ顔をした女性はきょとんとした顔で見ていた。
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