いきしちみ

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1-20.自己複製機『エゴトレーサー』

「さて、フォーくん。必要なEPは溜まったぞ。最終目標である設備を作る前に君の推論を聞かせてもらおうか」

 マスタールームの椅子にもたれながらスピーカーの向こうにいるフォーへ問いかける。俺が目標を達成する前に当てて見せると言った彼女はいままでも何回か予想を口にしては外していた。
 そして今日、設備設置を目前としたこの瞬間こそフォーが有言実行できる最後のタイミングとなっていた。

(ふふふ、フォーにマウントを取れるのはこれから先もなかなかないだろうからな。いまのうちに味わっておこう)

 いつもはゲームについてご教授いただいているフォーに彼女が知らないことを教えることができる嬉しさでつい頬がほころぶ。彼女の推理を上から目線で確認する気分はまるで推理小説の犯人にでもなったようだ。

『……マスターが最終目標としていたのはプレイヤーがなにも手を下さずともスレイヴが増えていく【感染機構パンデミック・システム】……というのが私の推論です。いかがでしょうか?』

「自動でEPを稼ぐところからそう考えたのか?残念ながら外れだ」

 なるほど、俺がわざわざ女たちを堕とさなくても勝手に股を開いていくようになるとフォーは思ったのか。その予想は完全に的外れだ

「もう少し俺のプランにかすってくると思ったが大外れだったな」

『スレイヴを堕とすことを楽しいと感じているのになぜEPの獲得を自動化するのか。この矛盾がどうしても理解できませんでした』

「なるほど、そこまでは気づいていたんだな」

 そう、フォーの言う通り俺の行動には矛盾が発生している。
 拠点制圧のクリアボーナスについてフォーと話していた時に俺は「女キャラを簡単に堕とせるのはまた別の楽しさがある」と言った。
 つまり俺にとってスレイヴを増やす行為は苦労はなく楽しいことなのだ。なのに俺はEPを稼ぐシステムを作ろうとしている、スレイヴを増やすならEPは稼がなくてもいいのに。

「EPを自動で稼ごうとしていたのは作りたい設備が毎日EPを消費するからだよ」

『毎日EPを消費する……常時稼働系の設備ですか?それはいったい……?』

「これだよ」

 マウスを操作してPCの画面にとある設備の詳細情報を表示する。そう、この設備こそが俺が最終目標として作ろうとしていたものだ。

「【自己エゴ・複写機トレーサー】 これが俺の最終目標だ」

 設備いっこ作るのにだいぶ時間がかかったな。これだけぶっ飛んだ性能じゃなかったらこんなに頑張って建設してないぞまったく。
 口元に笑みを浮かべながらRPGでメイン装備を更新した時のような達成感にふけっていると……

『マスター!!!』

「のわっ!!」

 とつぜん俺の身体はビリビリという衝撃波に襲われた。咄嗟に両手を耳に当てる。攻撃かと思うほど強烈なその波動はかつてないほどの大きさで迸ったフォーの声だった。

「きゅ、急に大きな声を出すなよ……どうしたんだ?」

 フォーの怒鳴り声なんて初めて聞いたぞ。まだ耳がきぃぃんと鳴ってるし心臓はバクバクと早打っている。

『自己複製機がどのような設備か、本当にマスターは説明文をお読みになったのですか?』

「うん?もちろん書かれていることは読んださ。俺のコピーを作る設備・・・・・・・・・・、であってるよな?」

 まさか勘違いしてたか?不安になったのでPCに表示している自己複製機の説明文に目をやる。

自己エゴ・複製機トレーサー
・設置EP:100EP
・稼働EP:20EP/1日

・この設備はプレイヤーと全く同じ意識を持つ複製体を作成することができる。
・複製した意識を稼働および維持するためには1日あたり20EPを消費する。EPを消費しない、あるいはできなかった場合、複製体は崩壊する。
・他の設備と連携することで複製体は拠点内の設備・キャラクターに対してアクションを起こすことが出来るようになる。

 なんだ、やっぱり間違っていないじゃないか。

『エゴトレーサーが複製するのはマスターの人格、記憶、感情、その全てです。つまりあなたとほぼ同一の意識がこの世に誕生することになります』

「そう書いてある。凄い効果だな」

 オリジナルと同じように思考する複製知能。そんな代物が作れる技術なんて今の科学からすればワープゲートと同じくらいオーバーテクノロジーだ。

「なにかマズいことでも起こるのか?」

『質問をお返する形になってしまい申し訳ございませんが、マスターにとって良いことがあるのでしょうか?』

 よりにもよって何故これを選んだのかわからない。珍しく強い語気からはフォーが心底そう思っていることが伝わってきた。

「あぁ、もちろんだ。ラインナップを見ていたんだがこれの他にも拠点内のキャラに幻覚を見せる設備があるだろ?その装置でコピーの意識体を住民全員に見せれば俺がいるように感じさせられると思うんだ。意識体とヒロインの間で五感の相互作用ができれば実態がなくてもセックスできるはず。そうすれば俺がいなくても……」

『マスター!!』

 興奮のあまりべらべらと構想を垂れ流し続けていた俺の口はフォーのらしかぬ大声に驚いて閉じた。

『拠点の改造を効率化するだけであれば他にもやりようはあるはずです。マスターであれば他のアイデアを思いつかれているのではないですか?』

「まぁ、そうだな」

『自分と同じ意識が存在するというのは思ったよりも受け入れがたいことですよ。必要がなければあんなモノ、作るべきじゃないんです』

「……フォー?」

 落ち着いた声色。平坦で、真っ白で、何も感じさせないマシンボイス。なのに何故だろう。いままでで一番心がこもっているように聞こえるのは。

『あなた方人間は70億人全員がオリジナルの存在です。誰かのコピーではありません。自分という存在が唯一であることが保証されているのに、何故わざわざ同じ存在が欲しいなどと思えるのですか?』

「…………」

 何も言い返せない
 疑問、憤怒、侮蔑、嘲笑、そして憧憬。
 いくつもの情動が複雑に絡んだフォーの本音に適当な返事はできなかった。

『教えて下さい、マスター。数ある選択肢からどうしてご自身の複製を作ろうと考えたのですか?』

「……欲望全開の理由だから言いづらかったんだが」

 フォーがそこまで気になるなら言わないとな。俺が自分のコピーを作る理由。それは――

「CG100%コンプのためだ」

『……………………はぁ?』

 さきほどまで声に含んでいた複雑な感情を疑問一色に塗り替えたフォーの訝しむ声。わお、一日でこんなにフォーの感情が揺れるだなんて驚きだな。

「なんだ。嘘偽りない本音だぞ」

『……すみませんマスター。まったく理解できないのでもっとわかりやすくご説明いただけますか?』

「そ、そんなに呆れたように言わなくてもいいだろ。そうだな……」

 さて、なんて説明しよう。そう思案した俺の視界にとあるゲームのパッケージが写った。これで例えるか、彼女に伝わるといいのだけれど。

「フォーはギャルゲーについて知っているか?複数のルートがあるゲームならなんでもいいんだが」

『知識としては知っています』

 ほっと胸をなで下す。それなら話は早い。

「それなら質問だ。複数のヒロインがいるゲームで各ヒロインのイベントを全て回収するにはどうすればいい?」

『そうですね。ゲームを何周もする、でしょうか』

「そうだな。俺もそうやってきたよ」

 一周につきヒロイン一人を攻略する。時間はかかるが一番確実な方法だ。

「じゃあ今度は条件追加だ。ゲームをプレイ・・・・・・・できるのは一周だけ・・・・・・・・・。そんな時はどうすればいいと思う?」

『む、なかなか難しいですね。その条件ですと…………同時に複数のルートを進める、でしょうか』

「いい発想だ。確かにそれが出来れば一気に解決できるな」

 一回のプレイでヒロインを何股もできるゲームが実際にあったりする。出来るからと言って心が痛まないわけではないが。

「じゃあ次はVDについて考えてみよう。さっき言った話はVDにも当てはまると思わないか?」

『複数ルートが、ですか?VDの一体どのような部分が同じだとおっしゃるのですか?』

「俺がVDをプレイする中で見えたルートは二つ。一つはヒロインと拠点の攻略、そしてもう一つは拠点改造だ」

 一、ヒロインたちを堕としながらEPを稼いで拠点を攻略するまでの新規開拓プレイ。

 二、攻略済みの拠点を更に発展させて新たな女性キャラや堕としたヒロインたちと何度でも楽しめるエンドレスエンジョイプレイ。

 VDのゲームプレイは基本的にこの二ルートの繰り返しだ。

「両方ともやっててすごく楽しかったよ。それぞれのフェーズで違う面白さがあったおかげで飽きずにここまで来ることが出来た」

 ヒロインを堕としながら拠点の攻略を進めるのは当然ながら、スレイヴを増やしたり色々な設備を作って試すのもとても楽しかった。
 どちらのルートも引き続き遊びたいと思っている。でも……

「物理的にも時間的にも、両方を同時に進めることはできない。そうだろ?」

『それは……当然のことだと思います』

 俺の身体も意識も一つしかない。だから新しい拠点を攻略している間は十和田マンションでスレイヴたちと酒池肉林にまみれることはできないし、逆にここで陥落済みヒロインたちといちゃいちゃしてたら新しい拠点は攻略することができない。
 両方おもいっきり楽しみたいと思っても交互に進めるしかないのが現実だ。

「同時に進められないからどっちかを選ばなきゃいけない。じゃあフォー、【頑張ったら手に入るかもしれない新しい快楽】と【頑張らなくても好きなだけ貪れる快楽】の二つならプレイヤーはどっちを選ぶと思う?」

『…………』

 わかっていて意地悪な質問をする。想像と違わず彼女は口を噤んだ。

 リアルの女性を攻略することで拠点を制圧できるゲーム『VD』。このゲームを始めた当初に誰もが思っていたこと、それは「女とセックスしまくりたい」だ。そうじゃなきゃあんな怪しいメールすぐにゴミ箱行きに決まってる。

 どのプレイヤーも女の子たちとエロいをするためにこのゲームをプレイしている。

 拠点を攻略するまでは、どうすればあの女キャラを堕とせるのか、拠点を落としたらこんなことをしてみたい、そんなことを考えてプレイを進めていく。その間は未知の快楽を求めてゲームの進行を続けるだろう。

 だけど拠点を制圧し終わったら?大した苦労もせずにセックスが出来るようになったプレイヤーはどうなる?

「たぶんヤリたい放題できる拠点改造の方に熱が入るよな。時間をかければかけるほど自分の好きなことができるようになるんだし」

『……そうでしょうね』

 人間はどうしても楽な方に流れやすい。それが望んでいたことならなおさらだ。

「実際、拠点を発展させるのって楽しいんだよな。手を加えるアイデアはたくさんあるし。俺だって堕としたヒロインやスレイヴたちともっと楽しみたいしな」

 というかいまのところEP稼ぎがメインで全然気楽にセックスを楽しめていないぞ。拠点を堕としたらヤリたい放題だと思っていたのになんだこの有様は。
 ……まぁそのことは今はいい。重要なのは攻略済み拠点の改造は攻略と同じかそれ以上に楽しいという点だ。

「簡単にいちゃいちゃできる攻略済み拠点で一ヶ月二ヶ月と過ごす。そんな時間が長く続いたら、新たな拠点を攻略するのなんて面倒になっていくじゃないか?」

『…………』

 少なくとも俺はそう思うようになっていそうだ。

 拠点攻略は楽しい。だけど同じぐらい楽しくてより簡単なコンテンツがあったらついついそちらを選んでしまってもおかしくない。
 明日から新しい拠点を落とそうと考えてもついつい後回しにしてしまうのが目に見えている。

 ぬるま湯に肩まで使ってしまうとそこから抜け出すのはとても難しいのだ。

「するとどうだろう。攻略した拠点で遊び惚けてゲームを全然進めない怠け者が誕生するわけだ。こんなプレイヤーがゲームを進める意思を持っているとフォーは思えるのか?」

『……いいえ。VDをプレイするに値しないと判断するでしょう』

「だろうな」

 ビンゴ。

 以前話した時にフォーは前へと進み続けるプレイヤーこそがVDをプレイするのに相応しいと言っていた。
 そんな彼女が怠慢なプレイヤーをそのままにしておくはずがないという俺の予想は的中していたわけだ。

 ゲームの進行だけを考えるなら落とした拠点はあまり触らずどんどん新しい拠点を攻略するするのがベストなのかもしれない。だけど……

「悪いが俺は拠点改造を一切しないなんて約束するつもりはない。俺が堕とした拠点と女たちだ。自分の好きなように楽しみたいって気持ちに嘘は付けない」

『……はい。マスターには当然その権利があります』

 残念そうにしながらもフォーは俺の意思を肯定する言葉を返してくる。
 一見すると俺の意思を尊重しているように聞こえるがその裏からは隠しきれない失望が滲みだしていた。気が早い奴だな、話は終わってないだろ。

(安心しろよ、フォー)

「言っとくけど、新しい拠点攻略も諦める気はないぞ」

『え…………?』

 それはまるで真っ暗な闇の中で淡く輝く希望を見つけたような声だった。

「おいおい、なんでこんな話になったのかもう忘れたのか?拠点改造だけに専念するならこんな設備は作らなくていいだろ」

『あっ…………』

 そう、話はここで自己複製機エゴ・トレーサーに戻る。

 問題です。複数のルートを一周で完全攻略するにはどうすればいいでしょうか?
 その問いに対する答えは……

『マスター。あなたは十和田マンションの改造と他拠点の攻略、その二つを同時に進めるためにコピーを作ろうとしているのですね?』

「そう、その通りだ」

 プレイヤーの数を増やしてしまえばいい。それがヒロイン攻略と拠点改造を両立するために俺が出した策だ。

『確かにコピーであろうと同一の人格を持っていればそれはプレイヤーと判定される。でも複製された人格には魂がないからヒロインの陥落は第一段階までしか進められない。故に意味がないと思っていましたが…………拠点改造と性行為は工夫すれば可能になる。まさかあの人・・・はそのために…………』

「おーいフォーさん?ぶつぶつと何言ってるんだ。早口で聞き取れないぞ」

『あっ……すみませんマスター』

 フォーはすごい勢いで独り言を捲し立てていたが俺が声をかけると我に返ったようだ。
 断片的に聞き取れた内容からするに彼女としてもこんな使われ方は想定していなかったのだろうか。

「そんなに予想外だったのか?そんなに珍しいアイデアでもないと思うんだが」

『そうですね。自分のコピーを作ろうとしたプレイヤーは過去にもいました。しかしこのゲームをプレイする目的とも言える攻略済み拠点での【お楽しみ】をコピーに任せる者はいませんでしたから』

「ふーん、そんなものか」

 意外だ、今後のことを考えたら十分考えられる選択肢だろうに。というかさらっと過去に他のプレイヤーがいたことをバラしたな。話の本筋からそれるので今はつっこまないけど。

『念のためお伝えするとコピーがヒロインやスレイヴたちと性行為をしてもオリジナルであるマスターにその体験が伝わることはありません。そのため本当の意味でマスターがヒロイン攻略と拠点改造の両方を体験することは出来ないということは理解されていますか?』

「わかってるよ。その為の対策も既に考えてある」

 拠点の改造を進めながら裏でまとめていたテキストをVDにアップロードする。これまでの経験を踏まえて俺なりに考えたエゴトレーサーの改修案だ。

『これは……』

「プレイヤーとコピー間での記憶の相互同期。この機能を追加してほしい」

 古今東西の創作の中でコピーがオリジナルの意思に反するようになる最大の原因は「オリジナルが持っていない経験が増えること」だ。
 もとは何かのコピーでもオリジナルとは別の経験を積んでいけば独立した個になっていく。つまり、二者の間に差が出来ることで別個の存在となっていくのだ。

 そうならないためにはお互いの記憶を同期すればばいい。コピーの記憶をオリジナルの俺に、オリジナルの記憶をコピーの俺に反映すれば両方の記憶をもった「俺」になれる。
 十和田マンションで命や八重、スレイヴたちとセックス三昧をする『オレ』。新しい拠点の攻略に心を躍らせて挑む俺。そのどちらの記憶も持つ完璧な俺に統合されるというわけだ。

(もし新しく拠点を落としたらそこにもコピーをつくる。そうしてまた拠点で楽しむ俺とゲームを進める俺に分かれる)

「そうすればほら、新しい拠点の女たちと落とした拠点での爛れた生活の両方が手に入るだろ?」

『…………』

 かっこつけて言ったものの帰ってきたのは沈黙だった。おかしいな、フォー好みのアイデアだと思っていたんだが。

『……コピーとオリジナルを同一に近づける行為はオリジナルとしての価値を揺るがしかねません。あなたを本物の宿見烙だと定義づけるものがなくなってもいいのですか?』

「うーん、そこは正直抵抗感があるかな。じゃあいくつか制限をかけよう。コピーは他の拠点を攻略することができない、はどうだ?」

 そうすればヒロイン攻略をしてVDを進めることができるのは本物の俺だけだ。
 おそらく他にも色々な制約をかけることにはなると思う。単独で拠点の外に出れないとかオリジナルとコピーでスキルを共有できないとか。
 オリジナルの俺とまったく同じようには出来ないだろうが、それはそれで工夫のしがいがあって面白い。

 それにやっぱりメインストーリーを進めるのは俺自身でありたい。
 一つの拠点に留まらずひたすら新天地を目指し続ける。
 増えていく俺の中で一番大変で、そして一番楽しい体験プレイ。こればっかりは『オレ』にだって譲れない。

『マスターはそれでよろしいのですか?このゲームを、楽しくプレイできるのでしょうか……?』

「当然だ。真のゲームクリアのためには全てのコンテンツ制覇が必要だからな!」

 ストーリー攻略も、やりこみプレイも、どちらも楽しみつくしてこそゲーマーというものだ。

「女を堕として拠点も落とす。それがこのゲームの遊び方だろ?」

『……ふふ。ふふふ。ふふふふふふふふふふ』

 壊れたように笑い始めるフォー。一瞬心配になったが声色がさっきまでと違って明るいから問題なさそうだ。

『ふふふふふふふふふふふふふふふふふ』

 いや、本当に大丈夫か!?同じトーンで笑い続けられると逆にホラーなんだが!

『ふふふ……っごほん。失礼しました。とても面白かったものですから』

「気に入っていただけたかな?」

『ええ。とっても気に入りました。このようなアプローチを取ったのはあなたが初めてです』

 心の底から褒め称えるような声。己の想像を上回ったアイデアに彼女はご機嫌のようだ。
 それにしても『このようなアプローチ』か。まるで違う方法をとったプレイヤーがいるような口振りだな。
 まぁいい、気にはなるがそれは別の機会にでも聞こう。誰がどんなプレイをしていようと俺は俺のやりたいようにするだけだ。

「さて、じゃああと一個だけやることやったら次の拠点探しに行くか」

『まだやり残したことがあるのですか?』

「当たり前だ。せっかく美味しく食べられるよう下ごしらえしてきたのにまだ前菜も食べてないじゃないか」

 彼女たちが楽しめるように、俺が愉しめるようにこの拠点を発展させてきたんだ。
 それが一区切りした今、ようやく心ゆくままに遊べるというものだ。

「ここまで頑張ってきたんだ。最後に少し派手に楽しんでも怒らないでくれよ?」

 送られてきた怪しいメールを開いてからもう何日が経っただろう。これっぽっちも女っ気がなかった俺の人生はあの日を境に一変した。

 たまたま催眠がかかったお隣の主婦を浮気大好き夫の悪口最高なわるわる人妻に寝取り堕とした。
 口煩いマンションの管理人が隠していた露出性癖を受け入れさせてド変態マゾに生まれ変わらせた。
 拠点を落とした後は目についた女を人妻だろうが子持ちだろうが手当たり次第に自分のものにした。

 最高の時間だった。ここまで手塩にかけた拠点から離れるのを惜しむ気持ちがないといったら嘘になる。
 だけど彼女たちと二度と交われないわけじゃない。『オレ』がこれからもこの十和田マンションで楽しみ続けるんだから。

 俺はまだ見ぬヒロインたちを夢見て次の拠点に向かおう。

 ……でも、新天地を目指すのは彼女たちとの宴を堪能してからでも遅くはないよな?

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